GONOHASHI OBSTETRICS & GYNECOLOGY HOSPITAL

当院での硬膜外麻酔分娩(無痛分娩)について

硬膜外麻酔分娩(一般的に無痛分娩といわれています)は、麻酔を用いて陣痛にともなう痛みをとりながら行う分娩です。
硬膜外麻酔あるいは脊髄くも膜下麻酔併用硬膜外麻酔という局所麻酔を用いて痛みをとる分娩方法です。
当院での麻酔は、産科麻酔に精通した麻酔科専門医の監修・指示のもとに管理いたします。
麻酔の合併症や副作用については、常勤医師から説明書を使用しご説明いたします。
現在、当院では経産婦さんの計画硬膜外麻酔分娩(事前に分娩を行う日を決めて入院し、子宮収縮薬を使用する分娩)を主体としています。
個々の妊婦さんに合わせた細やかな麻酔の調整を行う“オーダーメイドの硬膜外麻酔分娩”により、従来の和通分娩よりさらに痛みの少ない分娩をすることが可能です(陣痛の痛みの感じ方には個人差があり、そして分娩の進み方により変化します)。

硬膜外麻酔分娩をご希望の経産婦さんは、妊娠30週までに妊婦健診担当の常勤医師にお伝えください。実施可能かどうか医師が判断します。
なお硬膜外麻酔分娩については人数制限があり、ご希望に添えない場合がございますので、ご了承のほどお願い申し上げます。
実施可能と判断された場合は、妊娠34週までに硬膜外麻酔分娩および分娩誘発について当院より説明を行い、同意書に署名していただきます。

対象者

無痛分娩を希望する妊婦さんで、原則的に経産婦の方が対象となります。

硬膜外麻酔分娩を行えない場合

硬膜外麻酔分娩を希望されても、下記事項に該当する方などは行えない場合がございます。

  • 肥満 BMI>30は要相談、BMI>35はお断りしています。
  • 側弯症などの脊椎疾患をお持ちの方。
  • 採血検査で血小板減少や血液凝固異常を認める場合。
  • 背部の皮膚、特に穿刺部周囲の皮膚に炎症を認める場合。
  • 局所麻酔薬のアレルギーが疑われる場合。
  • その他穿刺恐怖など麻酔施行が困難な方。
  • 絶対に器械分娩(吸引分娩・鉗子分娩)は、やりたくないという方。
  • その他、医師が難しいと判断する場合

血液を固まりにくくするお薬 (バイアスピリン®) を服用している妊婦さんはご相談ください。

硬膜外麻酔分娩の方法

硬膜外麻酔とは、背部から脊髄に近い硬膜外腔というところに、細くて柔らかいカテーテルを留置し、そのカテーテルから麻酔薬を投与する下半身麻酔です。怪我や病気で手術をする方の術後鎮痛として広く行わている麻酔方法です。
基本的には、陣痛が強くなり妊婦さん自身が鎮痛を希望したときに麻酔を開始します。陣痛が5分間隔で子宮口が3~5cmで始めることが多いです。

  1. 1ベッドの上で座っていただき背中を丸くします。背中を消毒し腰のあたりに局所麻酔をします。

  2. 2局所麻酔をした場所から、細い管(カテーテル)を挿入します。
    カテーテルから鎮痛薬を投与して、陣痛を和らげます。
    鎮痛薬を開始してから30~40分くらいで効果が出てきます。
    妊婦さんの自覚症状や赤ちゃんの状態、分娩の進行具合に応じて、麻酔薬の量を調整します。
    出産時には意識があり、赤ちゃんと対面できます。
    硬膜外カテーテルは、分娩終了後に抜去します。

硬膜外麻酔分娩中の制限

硬膜外麻酔分娩中は以下のような制限事項があります。

  • 硬膜外カテーテル挿入後は、誤嚥などの危険防止のため硬膜外麻酔分娩中は原則として食事を禁止しています。少量の飲水は可能ですが、点滴からも水分を補っていきます。ただし分娩時間が長くなる場合には、医師の許可のもと軽食をとれることもあります。
  • 麻酔による運動神経麻痺で歩行中に転倒する危険があります。麻酔開始後は原則としてベッド上で安静とします。
  • 硬膜外麻酔分娩中はベッド上安静となるのでトイレに行けません。また麻酔による影響で排尿がしにくいため定期的に尿道に細い管を入れて導尿します。

    立ち会い分娩や分娩後の授乳は通常通り行えます。

硬膜外麻酔分娩における分娩への影響

  • 子宮の出口が全開大になってから赤ちゃんが出てくるまでの時間が延びます。お母さんと赤ちゃんが元気であれば、その時間が延びても問題はありません。
  • 自然分娩と比べて鉗子分娩や吸引分娩の確率が高くなると言われています。
  • 陣痛促進剤を使用する頻度や必要量が高くなると言われています。
  • 帝王切開への移行率は硬膜外麻酔をしていても増えません。

副作用および合併症

よくみられるもの

  • 悪心、嘔吐。
  • 全身のかゆみ:麻酔薬の影響で妊婦さんの体全体にかゆみがでることがあります。
  • 下半身に力が入りにくくなることがあります。
  • 発熱
    硬膜外麻酔中に妊婦さんが発熱することがありますが、分娩後おさまることが多いです。クーリングで対応します。また感染など他の原因が関係する可能性がある場合、採血などの検査を行う場合があります。
  • 一時的な血圧低下とそれに伴う胎児心拍数異常
    麻酔の影響で一時的に血圧が低くなることがあります。点滴や薬剤を使用し対応します。

まれなもの

  • 全脊椎麻酔
    カテーテルがくも膜下腔に迷入した場合などに、麻酔薬がくも膜下腔に入ることにより、麻酔が上半身にまで効いてしまうことがあります。重症の場合には、意識障害、循環不全、呼吸困難につながるおそれがあります。
  • 局所麻酔薬中毒
    カテーテルが血管内に迷入した場合などに、薬剤の血中濃度が高くなりすぎることがあります。耳なりや口のしびれなどの症状が出ます。重症の場合には、意識障害、循環不全、呼吸困難につながるおそれがあります。
  • 硬膜穿刺後頭痛
    硬膜外カテーテル挿入時などに硬膜に傷がつき、髄液が漏れることで起きます。この頭痛は座ったり、立ったりすると強くなるので、授乳が辛いと感じることがありますが、多くは1~2週間で自然改善します。水分補給(飲水や点滴)、鎮痛薬の使用などの対症療法で対応します。痛みが強い場合や症状が長引く場合は、ブラッドパッチ(硬膜外腔にご自身の血液を注入し、頭痛を改善させる処置)などの治療が必要となることがあります。
  • 神経障害
    ごくまれ(0.5%以下)に麻酔の影響で神経障害が起きます。麻酔終了後も臀部や下肢のしびれた感じ、足の動かしにくさ、排尿障害などが残る場合があります。通常は数日~1ヶ月程度で改善しますが、ごくまれに長期にわたり神経障害が残ることがあります。また麻酔による神経障害以外に、分娩そのものに起因する神経障害もあります。
  • 硬膜外血腫
    ごくまれ(0.5%以下)に針を進めた場所やカテーテルを留置した場所付近の硬膜外腔に血液が貯留(血腫)することがあります。血腫が脊髄神経を圧迫することにより、下肢の麻痺や膀胱直腸障害が起きることがあり、血腫除去術が必要となることがあります。また術後も症状が改善しないことがあります。
  • 不十分な鎮痛
    カテーテルの明らかな位置異常や薬剤投与量不足などで生じる疼痛に関しては、調整することが可能です。しかし原因不明で鎮痛が不十分になる場合があります。そもそも解剖学的に硬膜外腔への到達が難しい、硬膜外腔の部位に隔たりがあり薬が拡がりにくい、など様々な理由が考えられます。状況に応じて困難な場合もありますが、考えられる限りの最善を尽くし鎮痛に努めます。

以上の硬膜外麻酔分娩にともなう副作用および合併症に対応するため、硬膜外麻酔を行った後は、常に妊婦さんの心電図、血圧、経皮酸素飽和度などをモニタリングし、定期的に医師および産科スタッフが観察し分娩管理いたします。また赤ちゃんの心拍モニターも分娩中は継続して行い、異常の早期発見に務め、合併症が起きたときは適切に対処します。麻酔効果には若干個人差があります。効果が不十分と感じられるときは硬膜外カテーテルを再挿入することがあります。また麻酔の状態に不安を感じられるときは、すぐにご相談下さい。
硬膜外麻酔分娩を予定した日よりも早くに陣痛が発来した場合には、原則的に「硬膜外麻酔」を用いての無痛分娩を行えないことをご承知ください。

硬膜外麻酔分娩に関して合併症やその他の偶発症が生じた場合、その処置・治療の経費は患者さんの保険診療による負担となります。

硬膜外麻酔分娩説明書
硬膜外麻酔分娩マニュアル
硬膜外麻酔分娩看護マニュアル

硬膜外麻酔分娩の費用

費用
150,000円(麻酔導入および分娩管理料含む)

自然分娩予定からの緊急硬膜外麻酔分娩対応となる場合の費用は、170,000円となります。

  • 硬膜外カテーテルを挿入した時点から、硬膜外麻酔分娩の費用が発生します。このなかには硬膜外麻酔分娩に使用する特殊な針や麻酔薬の料金も全て含まれています。分娩の満足度に関わらず、硬膜外麻酔分娩費用は発生しますのでご了承ください。
  • 入院時に処置が必要な場合および分娩誘発・促進を行う場合の費用は、別途かかりますのであらかじめご了承ください。
  • 硬膜外麻酔分娩の進行中に何らかの理由で吸引分娩・鉗子分娩・緊急帝王切開術となった場合、手術は保険診療として行われますが、手術前に行った麻酔管理の費用は患者さんの自費診療による負担となります。
  • 東京都の無痛分娩費用助成事業の要件を満たす方は、上記金額のうち最大100,000円が助成の対象となります。

その他情報

医師数

常勤医師数非常勤医師数
産科医師49
麻酔科医師01
合計410

分娩取扱実績

2022年4月
2023年3月
2023年4月
2024年4月
2024年4月
2025年3月
分娩数626701581
非無痛経腟分娩数454523416
無痛経腟分娩数000
帝王切開分娩数172178165

当院は無痛分娩取扱施設のための「無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言」に基づく自主点検表の項目をすべて満たしています。
無痛分娩施設登録内容(JALA)

「無痛分娩に関わる助産師・看護師について」覧の研修受講歴カテゴリCの受講者は0名です(今後受講予定)。

JALA(無痛分娩関係学会・団体連絡協議会)

更新日:2025年8月28日

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